有機質肥料とは
そもそも、「肥料」とはなんだろう?
最初に、「肥料」というものについてカンタンに整理しておきましょう。
植物は、太陽光のエネルギーを使って、水と二酸化炭素から炭水化物を作り出して生長します。いわゆる光合成です。しかし植物が生長するためには、他にも「植物の必須要素」と呼ばれる17種類もの要素が必要。
その中には大気と水から供給される炭素(C)、水素(H)、酸素(O)も含まれますが、その他の要素は根を通して土壌中から摂取しなければなりません。つまり、植物(作物)の生育(生産)にあたって、これらが土壌中に不足する場合には補給してあげることが必要で、そのために施用するのが「肥料」なのです。
「肥料」として施される要素にはそれぞれ特有の効果があり、植物が必要とする量によって3つのグループに分類されています。
まず1つめは、植物が育つために多くの量を必要とする[ 3(大)要素 ]。
3要素とは、チッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)のことです。このなかでもチッ素は、植物そのものを形作るたんぱく質や、光合成に必要な葉緑素など、植物体のなかで大切な働きをする物質の構成元素であり、植物の生育にもっとも大きく影響する要素です。
2つめのグループは、3要素ほど多くは必要としないけれど、植物が育つうえで欠かすことのできない[ 中量要素 ]。特にカルシウムは、土壌が酸性である場合のpH調整にも有効です。
3つめは[ 微量要素 ]と呼ばれるグループで、必要量は少ないながらも、植物の健全な生育を助ける働きをしています。
要素は大きく分けて3種類
3要素植物が特に多量に必要とする主要素
中量要素植物に十分な栄養を与える要素
微量要素
いよいよ、有機質肥料のお話
化学肥料は、植物が(根などから)各要素をそのまま吸収して活用できる状態の肥料なのに対し、有機質肥料に含まれる「有機体窒素(主にタンパク質)」は、土壌中で微生物などによって分解されることで、植物が容易に摂り込めるカタチである「無機態窒素(アンモニアや硝酸)」に変化し、効果を発揮するものです。
土壌中での変化と有機体窒素の無機化
土にアプローチする
有機質肥料だからこその効果
前のセクションでも紹介した通り、有機質肥料は土壌中での分解によって養分がゆっくりゆっくり放出されるため、肥効は緩効的。
またその過程では、有機物は分解している側の土壌微生物にとってのエネルギー源となっていて、これが生物相の多様化に繋がります。
さらには、微量成分をはじめとする様々な成分、高分子化合物の供給が土壌団粒(※)の形成を助けるなど、直接的な養分供給以外にも、土にアプローチすることによる多くの効果が期待でき、これも作物の品質向上に結びついているのです。
※土壌粒子が結合して小粒の集合体となったもので、保水性と同時に通気性や通水性にもすぐれ、作物の生育に好適な状態。
有機肥料が作物の品質を
向上させるメカニズム
1840年に、ドイツの科学者であるリービッヒが無機栄養説を唱えて以来、植物は無機物で栄養(養分)を吸収しているという考えのもと、多くの化学肥料が開発されて広く流通し、化学 (近代) 農法が確立、一般化しました。
しかし1970年代後半ごろから、化学薬剤の濫用による土壌の荒廃や残留農薬などが問題視されて「有機への回帰」が叫ばれるようになり、様々な研究が行われた結果、種類や環境によって、植物が有機物を吸収、利用していることもわかってきたのです。
ここでは、中でも「アミノ酸」に注目して、その働きを紹介します。
こんなにある
アミノ酸の働き
キシンプロリン